VISION

認証事業ビジョン

産 × 学 × 官 / インタビュー

靴業界に変革をもたらす認証事業「i/288」の可能性

全日本革靴工業協同組合連合会 会長 東都製靴工業協同組合 理事長 パイロットシューズ株式会社 社長

藤原 仁

快適な履き心地を提供し、靴選びの失敗を防ぐ

靴は「履き心地」が重要な製品であるにもかかわらず、お客さまに「フィット感」についての細かい情報を提供してきませんでした。サイズや履き心地の基本となる靴型もメーカーによって違うため、靴が自分の足に合うかを確かめる手だては、お店に行って履き試していただくしかありませんでした。スマホで簡単にモノが買える時代になって来たにもかかわらず、靴選びの手間は、今も変わることなくお客さまに不自由を強いています。

その問題を解消するためには、メーカーの垣根を越えて、靴業界全体でサイズを標準化する必要があると考えています。プロジェクトを開始して以来、3D計測器を駆使して膨大な足型のデータを収集・分析してきた成果が、パンプスのサイズを標準化した認証基準靴のブランド「i/288(ニーハチハチブンノアイ)」です。お客さまは店頭で足を計測してフィッテイングを行い、288種類のサイズバリエーションの中から自分の足に合ったサイズを選びます。一度、足にフィットするサイズがわかれば、どのメーカー、どのブランドの靴を選んでも、同じフィット感を得ることができます。「i/288」は、お客さまに快適な履き心地をご提供し、靴選びの失敗を防ぎ、下駄箱にお蔵入りさせない画期的な取り組みへの挑戦なのです。

在庫リスクを軽減して靴産業全体の収益率を高めることを実現

認証事業により製造ガイドラインを定めることは、メーカー側にも大きなメリットをもたらします。自動車の製造工程では多品種生産に対応するため、車体のベースとなるシャーシを統一し、ボディだけを変えるのが一般的です。靴も同様にサイズを標準化してメーカーが共有することで、品質の向上とコストダウンを両立できます。同じものを作り続ければ生産技術が向上するとともに、材料の調達もスムーズになるからです。今後、ストックヤードでのロボット化等を活用して効率化を進めることも可能になり、収益拡大にも大きく寄与します。

さらに、「i/288」は、受注生産型マスカスタマイズシステムの流通モデルなので、在庫に悩まされることもありません。加えて、お客さまにお届けするまでのリードタイムを短縮できれば、さらに高い満足度をご提供できます。従来の靴業界にはなかった新しい価値をメーカーが主導して創造し、お客さまに快適な履き心地の靴をご提供する。「i/288」という認証事業は、靴の製造、流通、販売を含めた業界全体を大きく変える可能性を抱いた世界初の試みなのです。

認証事業で培った強みを武器に、Made in JAPANの靴を世界へ

「i/288」は、全国各地の百貨店で実施したポップアップストアで多くのお客様から支持を得て、日本橋と高崎の髙島屋に常設店をオープンしました。セールを行わないにもかかわらず、お蔭様で好調な売上を維持できているのは「快適な履き心地」に対するニーズの高さを物語っていると考えています。今後は、Webサイトによる認知度の拡大や、リアル店舗での調整のサポート、またスマホアプリで足のサイズ測定を可能にするなど、ICTを活用した「i/288」の展開を推進する予定です。

少子高齢化で国内の需要が縮小し、グローバル化を推進している日本において、靴業界も海外市場に目を向けなければ今後の成長は望めません。そこで強みとなるのが「i/288」認証事業のビジネスモデルです。日本が有する優れた技術と「お・も・て・な・し」、そして、ものづくりに対する真摯で緻密な姿勢は、海外においても高い競争力を発揮することと信じています。この認証事業を通して、日本の靴業界を活性化すると同時に、海外市場に進出するための布石にしたいと考えております。

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