経済産業省製造産業局 紙業服飾品課長

渡邉 政嘉

渡邉 政嘉 日本の“ものづくり”の強さって何だろうかという問いかけがよくあります。1番目は優れた素材を提供する素材産業が強いこと。2番目は、日々努力されている“ものづくり中小企業”が集積していること。3番目は“すり合わせ”にあると考えています。例えばトヨタには通称“大部屋制度”という伝統があり、そこではブレーキメーカーやエンジンメーカー、素材メーカー等、さまざまなサプライヤーからゲストエンジニアが集まり、基本設計に沿ってよりよい提案を出しあいながら、具体的な仕様を詰めるという取り組みがされています。このような過程において、いい提案(例えば高品質なものを低コストで提供する等)を出した企業に仕事がおちていく。そういった、チームですり合わせながら最適なシステムをつくり込むプロセスをものづくりの基本としているカルチャーが、トヨタのみならず日本にあります。このすり合わせが3番目の強みだと考えています。 
さて、我が国靴製造業ではどうでしょうか。我が国の靴製造業の強さは他の鉱工業製品同様、品質が高いことだといわれます。ただ、その品質に関する伝統的な考え方は、製造プロセスにおける品質と捉えられることが多く、実は国際競争の激化する現在においては、それだけでは十分でありません。さらに消費者にとって新しい付加価値をどのように提供できるかが問われているといえます。それに応える取り組みが今回のプロジェクトの挑戦だと考えています。

傷ひとつ無く、同じサイズであれば寸法・形状が寸分違わないものを安価に大量に作るといった狭義の品質管理のみならず、作り出された製品がユーザーの手に渡った後の使用環境で、デザインされた靴の機能がどのように発現しているか、すなわち利用環境における品質(利用品質=クオリティ イン ユース)も広義の品質として捉え直し、この利用品質をいかに確保するかが求められているのです。

将来は足形の3Dデータを計測後、3Dプリンターで1足ずつオーダーメイドの靴を作れる時代がくるかも知れませんが、一気にそこまではいきません。足のサイズや形が異なる多様なユーザーに対して利用品質を担保するためには、まずは、できるだけ多くの選択肢を提供することが基本的なアクションになります。今回のプロジェクトでは“288”というのをひとつの選択できるモデルとして提案したことで利用品質も高めようとしているのです。実際に履いて使ってみて、ただピッタリ合うだけじゃなく、靴の中で足が動かないで安定するとか、そういうところまで含めて人間工学的に靴の品質を高めていく努力がされてきました。また、日本の靴メーカーの方々は日本人の足型に関するデータをお持ちですし、作って売ってきたという経験も持っているわけです。そこに、産業技術総合研究所の持丸さんはじめ他の研究者の皆さま方の高い技術力を駆使し、それを“日本のものづくり”に活かすことができれば、これはもう外国では真似できないものができます。海外から貿易自由化でいろいろなものが入ってくるかもしれませんが、「どんと来い」ということになります。

ようやく、具体的な形になって“プレ認証”にまでこぎつけました。ここでしっかりと基盤を築き、さらなる進化を遂げることで“日本の靴づくり”が世界に冠たるものになると期待しております。